ホーランドアメリカの船に乗って撮影を初めてもう1ヶ月が経った。この1ヶ月、ノルウェーの様々な地を巡り、仕事内容を覚え、クルーズ船で働く上でのルールや仕組みを覚え、あっという間に時間が過ぎた。
ここで一旦、僕のやっている仕事がどんな仕事なのかをブログにしてみようと思う。
前のブログでも書いたが、1600人も働く船で、日本人のスタッフは僕一人だ。
会社はニコンを推奨していて、フォトグラファーはほぼ皆ニコンのカメラを使用して撮影している。ニコンは日本のメーカーだ、船で働く日本人のフォトグラファーがもっといても良いんじゃないかって思う。
英語が仕事で使用できるレベルで話せる事が条件なので仕切りが高く見えるかも知れないが、チャンスは皆平等だ。船でフォトグラファーとして働いてみたい人や、旅をしながらフォトグラファーとして働いてみたい人の助けになればと思ってこのブログを書いている。
撮影する被写体
これは完全に”ゲスト”に限る。風景写真も撮るものだと思っていたが、仕事として撮影する写真は全て販売を目的としたポートレート写真だ。
撮影場所はスタジオ、レストラン、パーティ(船の上はとにかくパーティが多い笑)、各地に着くポートで乗客が降りてくる瞬間、船が出航する時の屋上の5つが主。たまにイレギュラーな撮影が入ったりする。
撮影は全てJPEG
今まで写真は全てRawで撮影していたが、仕事で使う写真は全てJPEG出し。理由はとにかく時間が勝負だから。短時間で出来る限り多くの写真を撮影して、少しでも早くゲストに見てもらって買って貰うのが主な仕事だ。写真の売り上げがそのまま自分達の給料に反映する。
会社によっては本当に撮影したJPEGに何の加工も加えずシステムに載せる所もあるらしいが、ホーランドアメリカでは多少の加工はする。
加工といってもの色合い・シャープネス・クロップくらいだ。
写真は全てアメリカ式の5×7か8×10サイズでのプリントになるため、それ用にクロッピングする。
驚きなのは、撮影するフォトグラファー4人に対し、ラボにこもって編集するスタッフは1人!
1日で僕たちが2000枚撮影しても3000枚撮影しても、編集は彼一人。
撮影が終わるのは遅くて夜10時半。それからの編集だ。編集を担当する彼は僕の部屋のルームメイトなのだが、いつも部屋に戻ってくるのは朝6時頃。基本的に部屋を独占出来てラッキーだけど、とても彼がいるポジションは僕には出来ない。給料を5倍にすると言われてもやりたくない。そんな業務をこなす彼には尊敬と激励の気持ちでいっぱいだ。
撮影で注意しなければならない事
僕の場合、自分で試して分からない事はYoutubeを見て写真を勉強したから、写真に対して人からこうしろああしろと言われたことはない。
船の写真は、ライティングから構図まで全て会社で決められていて、その通りの写真を撮る事が正解で、それに沿って撮影しなければならない。
別に難しい事じゃない。むしろ簡単だ。F値も各撮影場所ごとに決められていて、機種によっての明るさや色の出方の誤差を若干調整する。
僕は今まで自分が撮りたいイメージがあって、それに合わせて撮影してきた。とは言ってもフリーランスとしてはまだまだ駆け出し。
ここで学んだ事をそのまま自分の写真に使おうとは思わないが、得てる経験は自分に必要なものだったように感じる。
僕は自分からアプローチするよりも、自分が求める瞬間やタイミングを待って撮影する方が好きだ。こっちから笑ってとか、ポーズをレクチャーするのはあまり得意じゃないし、何よりそうやって出来上がった写真は業務的で好きじゃない。
でも、常にJPEGで撮影する事は物凄い経験になっていると思う。
Photoshopに頼らないでいたつもりでいても、やっぱり頼っていたと思い知らされた。
特に外での撮影では、2000人いるゲストにいきなりアプローチして素早く撮影する。外の撮影では太陽の動きや建物の影など、その都度設定を正確に変えて一度でその瞬間をとらえないといけない。被写体が目を瞑ったり、喋り始めたり(オランダ人は撮影してるのにお構い無しに喋り続ける!!笑)、どこか他の方向を向いたり急に妙な行動をとったりする人もいる。それを後から確認してたのでは遅いから、シャッターを押した瞬間に気付いて、必要なら別の写真を撮影する。これをとにかく出来るだけ早いスピードでこなす。
撮影以外の仕事
写真を撮る以外の業務もある。例えばこんな…。

労働時間
これも前のブログで書いたが
・Sea day(一日中航海する日)は8時間~12時間。
・Port day(港に着く日)は5~6時間。
契約の6ヶ月間休みは一度も無いので、Port dayがゆっくり休める日になる。
フリーの時間は町を散策したり、ツアーに参加したり、昼寝したり、カフェに行ってネットを使ったりと自由だ。僕は大体ウェブサイトの更新や自分の作品撮り、最近は動画にとても興味があって、動画の勉強やFacebookやInstagramの更新、メッセージの返信など。自由時間は大体5時間程度。
インターネット環境
これは中々過酷だ。
なんと600MBで40ドル!(約4000円)。一度買ったが、高すぎるのでそれ以降は買っていない。緊急でどうしても連絡を取らなければいけない人がいたりする時は5ドルで少しだけネットに繋いだり出来るが、船の上ではネットは使えないものと割り切っている。
給料
やっぱり仕事をするとなると気になるのは給料のはず。世界を旅する超豪華客船、お客さんは世界中の富裕層、きっと給料は良いのだろうと思ったあなた。残念。笑
フォトグラファーの固定給は月給10万円以下だ。これはどう捉えるかでもあると思う。
契約する半年の間、食事は3食、アイスクリームからデザートなどのおやつまで食べ放題。ソフトドリンクやアルコールは激安、物を買うのもスタッフ価格(2ヵ月以上働くと、ニコン製品を割引価格で買えるようになる)、電気代や水道代、部屋代もなく、シーツやバスタオルは2日に1回クリーナーのスタッフが交換してくれる。
ユニフォームやスーツは無料でクリーニングしてくれて、スタッフパーティではお酒も飲み放題。更に自分の家から近い空港から船までの往復チケットも買ってくれて、仕事が終わった後は帰る時期や経由地、行き先など自由に変更できる(上限金額あり)。
何より、世界の様々な場所を自分のお金を使わずに旅出来る。
この給料をどう捉えるかは、本当に人それぞれだと思う。
そして、固定給に上乗せしてコミッションが入る。写真や商品の売上(Goproやカメラ本体なども販売している)、ゲストからの評価レートなどでコミッションの額が決まる。僕はまだ最初の月で給料を受け取っていないので分からないが、聞いたところによると売上が良いと手取り30万を超える事もあるらしい。
仕事を体験してみて思う、この仕事最大の魅力
これは仕事をする前から想像していた通り。
最大の魅力は大きく分けて2つある。
魅力① 仕事をしていない時間に撮影した写真は自分のもの
この時間は自分が本当に撮りたい写真を撮る時間。街を歩いて人と出会い、アートや食に触れてインスピレーションを受け、自分の作品を作れる最高の時間。自分のやりたい事を続けながら、船のフォトグラファーとしても働けるのは最大の魅力だ。
魅力② 船で出会う仲間やゲストとの今後の繋がり
船の上では、ゲストの部屋へ行ったり、一緒に飲んだりする事は禁止されている。でもそれはあくまで船の上の話で、仲良くなったゲストに自分のビジネスの名刺を渡して、降りた後に連絡を取り合うのはオーケー。この1ヶ月で沢山のゲストから「いつか自分の国に来たら案内する!」や「いつでも家に泊まりにおいで」と言って名刺を受け取った。
中にはベルギーのビデオグラファーの人からプロジェクトの誘いがあったり、マルタ出身の夫婦からは、マルタで写真のビジネスをやりたいなら協力すると言ってもらった。
多分Shuって名前が覚えやすいのか、一緒に働くスタッフの多くが僕の名前を覚えて名前で呼んでくれる。いつも食べに行くレストランでは、タイ人の子は俺の好みを覚えて、夜遅くに行っても俺のお気に入りの料理を取っててくれたり、個人的にバンドメンバーからコンサートやバースデーパーティの撮影の依頼を受けたり、色んな遊びに誘われたり、たった1ヶ月でもすっかりこの船がホームになってる。
一緒に毎日写真を撮っているナミビア人のラビとインド人のガナッシュとは、船を降りても絶対にまた会いに行ったり来たりするだろう。
こんな人との出会いは、間違いなく人生の財産となる。
思ったよりも長くなったが、これが船で働くフォトグラファーの業務内容だ。
ビザのことや税金の事などは書くとキリがないので省略。
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世界のどこかで見た空の風景だけを集めたアカウントを新しく作りました。
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