俺が初めて”旅行”ではなく”旅”をしたのは22歳の時だった。
それまでは、行き先の事を調べ、プランを立てて、ネットや雑誌などで見たお店に行ったり、テレビで紹介された観光地へツアーで行く事しかしてこなかった。
「これからどこへ行くの?」
と聞いて
「分からないよ。ただ流れに身を任せてるんだ」
と答える人と出会ったのは初めてだった。そこから旅に興味が湧いた。
目的や予定をこなして満足するためじゃなくて、旅をする事が目的なんだ!と衝撃が走った。
スーツケースを捨ててバックパックに切り替え、片道チケットを持って行った先がオーストラリアのタスマニア。
最初は一人だった。お金が無いから、昔誰かのブログで読んだ安宿”バックパッカー(通称バッパー)”に泊まった。
みんなラウンジで楽しそうにお酒を飲み、トランプをしたり、映画を見たりしてる。
中々入っていけない。
英語は話せなかった。
でもそれ以上に、どうしたらいいのか分からなかった。
結局誰とも会話せずに、静かに寝て、次の日を迎えた。タスマニア一周の旅をするうちに、一人、また一人と仲間が増えていく。
オランダやドイツ、アイルランド、イギリス、日本人も一人いた。他の国から俺と同じように一人旅で来ていて、ここでたまたま出会っただけの仲。
そんな彼らとは、全員ではないが、9年経った今でも連絡を取り合っている。
なんとも言えない感覚だった。つい半年前は日本で普通に仕事をしていた。こういう旅の仕方は白人のやり方で、アジア人の自分には出来ないとどこかで思い込んでいたのかもしれない。
でも、実際には、旅をするのに必要なのは健康な体だけだ。肌の色や言葉なんて関係ない。
タスマニアの旅を通して『自分にも出来たぞ!!』という達成感が湧いてきた。
その時思ったのだ。
『俺はこれを一生続けたい!!』
当時の俺は、やりたい事を探していた。何でもいい、大好きと言える事を仕事にしたかった。
一つ、大好きと呼べる事を見つけた気がした。
と同時に『どうやったらこれを生涯続けられるだろう?』と考え始めた。
旅で出来た友達はいつも
「いつか自分の国に会いに来い!」
と言ってくれる。
行きたい。今すぐにでも!でも、仕事はどうすれば良いんだろう?と頭の中がグルグルした。
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あれから9年の月日が経つ今、俺はこのブログを成田からコペンハーゲン行きの飛行機の中で書いている。
人生初めてのヨーロッパ。
人生で初めて、人からお金を頂いて旅をしている。
今年の6月から半年間、アメリカのクルーズ船の会社”Holland America Line”からフォトグラファーとして契約を貰い、今は拠点となるオランダに向かっている。
飛行機もホテルも会社が取ってくれた。飛行機の乗り換えのため、コペルハーゲンに約4時間滞在出来るので、飛行機で隣だったデンマーク人に空港周辺の事を色々聞いて、初めてのヨーロッパの街をプラプラ歩いてみた。

フリーの写真家として活動を始めた時に掲げた目標は、お金を貰って旅が出来る様になる事だった。
夢は願えば叶うんだ!
理想の生活スタイルを求めて、夢に向かって、また一歩踏み出せたかな。
これから半年間、何万枚の写真を撮ることになるか分からない。シャッターを押す指が腱鞘炎になるかも知れない。
仕事を始めるのが、ただただ楽しみでワクワクする!だって、呼吸するのと同じくらい自然に写真を日々撮って、写真を撮るのが本当に幸せで、それに対してお金を貰えるのだから。
こんな風な気持ちで仕事に臨めるようになったのは、9年間、それを求めたからだと思う。
遠慮したり、諦めたり、言い訳したりして、夢を追いかけるのを止めるのも選択の一つ。
でも、本当に叶えたい夢があるなら、それを願い続けたら、そこに向かって努力し続けたら、その夢は必ず叶う!
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